ロケットリンクテクノロジーを応援します

日本ロケット協会会長 高松 聖司

当協会の副会長を務められている森田先生がロケットリンクテクノロジーを創立しました。日本のお家芸で世界の最先端を走っている固体ロケット技術、その正統的な継承者である森田先生が率いるロケットリンクテクノロジーの果敢な挑戦は世界に大きな衝撃を与えることが期待されます。

日本は世界で四番目に人工衛星を打上げた宇宙国です。先行したソ連(当時)、米国、フランスのロケットが例外なくドイツのV2ミサイルの技術を基盤にしていたことに対して、日本だけが全く独自に、ちいさな火薬から初めて独創的なアイデアと不屈の信念によって人工衛星の打上げに成功しました。

それからおよそ50年。日本の固体ロケット技術は世界をリードし、日本の科学衛星の発展に貢献してきました。しかしどんな業界においても50年という期間はひとつの節目です。世の中の環境が変わり、過去に強みであったことが制約条件になって衰退するという例は枚挙にいとまがありません。固体ロケットをとりまく環境もまた大きく変わってきました。もともと固体ロケットは手間のかかる液体ロケットとくらべて手軽であることが優位点でしたが、その製造の繊細さが製造コストの高止まりと、製造能力の限界といった欠点につながり、日本だけでなく欧州においても大きな問題となっています。ロケットリンクテクノロジーはこの問題に「低融点熱可塑性推進薬」という画期的な技術で突破口を開こうとしており、まさに日本独自のロケット開発の王道をつき進む挑戦です。

ひるがえって宇宙開発をとりまく世界情勢をみると、官需から民需へ、オールドスペースからニュースペースへ、という流れが加速していると言われてきたものの、現実がそれほど楽観的なもので無いことが、さまざまなプロジェクトの挫折によって認識されてきています。この状況が示すことは、「新しいことをする」というのは「王道を捨てる」ことでは無い、「王道」の良さを活かしつつ定番を新しい世界の要望や課題にリンクさせることこそが求められているということに他なりません。このことに世界が気付きつつあります。

ロケットリンクテクノロジーは固体ロケット技術の王道を歩みながら、自らを変革し、遠い将来ではなく今の世界が必要とするものを提供しようとしています。足りない小型衛星の打上げ手段を提供し、固体ロケットの発展に寄与し、打上げ業界に勢いを与え、さらには教育にも貢献しようとしています。まさに世界の要望や課題に「リンク」するという意味でも、会社名にリンクが入っていることは示唆に富むと言わざるを得ません。

世界的に停滞している打上げロケットの現状を打破し、ロケットリンクテクノロジーが中興の祖として世界で大活躍することを心から願っています。